大道芸人「が〜まるちょば」 韓国人を笑わせた2人

日本の2人組の大道芸人が、海外に活動の場を広げている。
韓国で行なわれたパントマイムのフェスティバルでは断トツ人気。
「が〜まるちょば」。グルジア語で「こんにちは」だ。


 ロボット芸を披露するケッチ!さん(左)と吉見さん。場の雰囲気を盛り上げ、観客を自分たちの世界に引き込んでいくのがうまい
 韓国の春川で6月初めまで開かれていた「国際マイム・フェスティバル」で、日本の2人組の大道芸人が人気を集めた。
 言葉を便わずに身ぶりで表現する芸、パントマイムは韓国では人気が高く、春川のフェスティバルは今年で13年の歴史を持つ。今回は、韓国の芸人を中心にカナダ、フランス、アメリカ、モンゴル、日本から約40組が自慢の芸を披露した。

アンコールの声湧く

「『が〜まるちょば』って、すごくおもしろいよ」
 フェスティバル期間の後半になると、町中でそんな声を聞くようになった。実演を見に来た人ばかりでなく、インターネットを使った放送局の番組で見た人も多いようだ。そのネットサイトの人気投票では、「が〜まるちょば」が第1位だった。静岡県出身で大道芸歴8年のケッチ!さん(31)と埼玉県出身でパントマイムのソロ公演歴7年の吉見ヒロシさん(35)が97年夏に結成したコンビだ。
 フェスティバル最後の夜、朝まで続く「鬼の祭り」という野外ステージがあった。彼らの出番は夜中の3時半ごろ。ロボットに扮した吉見さんが舞台に現れると、すぐに大歓声に包まれた。そのロボットをケッチ!さんがリモコンで捜査するという芸。吉見さんが口にくわえた笛からヒューンという効果音を出すと、そのリアルさに会場は思わずどよめいた。観客に向かって手を振っているうちに「誤動作」で腰が前後に動いてしまったり、握手をしようと思っているのに手があらぬ方向へ離れてしまったり、コミカルな動きが観衆の笑いを誘う。
 約15分のステージが終了すると、アンコールの声が湧き起こった。多くの出演者の中で、アンコールを受けたのは彼らだけだった。
 パントマイムの公演は、ともすれば芸術的な方向に向かいがちだ。それを、だれもが楽しめる無言のコメディーショーに仕立てたところに、人気の秘密がある。
「最初はいろんなタイプのマイムをやってたけど、楽しいものを演じたら、自分も楽しいことに気づいたんです」(吉見さん)
 ケッチ!さんは高校の文化祭で独学のパントマイムを演じ、それがみんなに受けたことがうれしくて、パフォーマンスの世界に飛び込んだ。
 吉見さんは高校卒業後しばらくアルバイトをしながら、自分の進む道を模索していた。人と話すことが苦手だったが、ある日、パントマイムに出合って、自分に向いていると思ったという。現在、ケッチ!さんは週末に東京都内の公園で大道芸をやって、多いときでl日2万円程度の「投げ銭」を稼ぐ。吉見さんは東京アナウンス学院(東京都中野区)でパントマイムの講師をしながら、やはり大道芸をやったり、舞台に立ったりしている。

大道芸も舞台ある

 2人は昨年、国内各地の大道芸フェスティバルに参加したほか、イギリスのエディンバラで開かれたフェスティバルにも参加。ロンドンで大道芸を披露するなど、活動の場を広げている。
 「が〜まるちょぱ」のパフォーマンスは、路上で培われた自由さと、劇場で作り上げた演劇的な要素を兼ね備えている。繁華街の大道芸であろうが、ホールのステージだろうが、どんな場面でも観客を笑いの渦に巻き込めるのだ。
「大道妻と舞台のおもしろさは違うので、両方を続けたい。9月にヨーロッパと韓国で大道芸をして、11月30日から12月2日まで武蔵野芸能劇場(東京都武蔵野市)で3度目の公演をします」
 とケッチ!さんは抱負を語る。

ルポライター 新井由己 (文と写真)

『AERA』(朝日新聞社)2001.7.30号より転載。
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